2017年12月4日、ボーンデジタルさん、MasterDrawingJapanさん主催の「ドローイングマニュアル」著者:グレンビルプ先生のセミナーに行ってきました。
この記事はセミナーのレポートです。
- 絵を描くとは?
- 想像を絵に起こすための方法とは?
- 絶対に上手くなるコツとは?
といった、絵を描く人であればおそらく思い浮かぶであろう疑問に、シンプルにかつ「ですよね」と思わざるをえない答えをくださったセミナーでした。
グレンビルプ先生ってこんな人
講師の紹介
グレン・ビルプ 氏
グレン・ビルプ先生の教育歴は、50年以上にのぼります。ディズニー、ドリームワークスをはじめ、大手アニメーションスタジオや学校、オンラインスクールで講義を行い、数多くのアーティストを育てています。現在、欧米で活躍しているアニメーション業界のアーティストは誰もが、直接または間接的にグレンの教えを受けています。今回は、4度目の来日授業となります。
セミナーのざっくりした内容
ビルプ先生の著書である「ドローイングマニュアル」に描かれていることを、実演しながら解説をしてくださいました。書籍だけでは得ることが出来ない、先生の魔法のようなドローイングは本当に素晴らしかったです!
セミナーに参加する前に、ボンデジ編集の平谷さんからこんな言葉を頂いていました。ビルプ先生の講義は、魔法のようで、とてもおススメです。
説明が難しいのですが、目の前で何気ない線が生き生きとした人間に変わっていくのです。それを飾らない口調で淡々と、「みんなもできるよ」って教えてくれます。もうまさに、セミナーの内容も、先生の雰囲気も何もかもが、おっしゃる通り!でした。
「みんなもできるよ」
セミナーでは先生にそんな言葉とともに「描けるようになる、できるようになる」魔法をかけてもらってきました(n*´ω`*n)
こんなことを教えてもらってきました。
人間の身体をしっかり描けるようになるためには?
「人間の身体をどれだけ描けるかは、人間の身体をどれだけ理解しているかです」
絵を描くにあたって大切なことは
- 絵の奥にあるストーリーを表現する
- 何を伝えたいか
- 何よりも感情、ジェスチャー!
との話が、講義全体を通してお話されていました。
ではその、ストーリーを表現するため、伝えたいものを表現するため、感情をジェスチャーを表現するために「人間の身体をしっかりかきたい!」となった場合どうしたらいいか。
「人間の身体をどれだけ理解しているか」
どシンプルにそのようにおっしゃっていたのがとても印象的でした。
では人間の身体を理解するためにはどうしたら…?
では実際に、人間の身体を理解するためにはどうしたらいいか…?という部分についてドローイングマニュアル内にも記されているアナトミー(解剖学)をしっかりと理解する、というこも大変重要視はされていたのですが、先生のお話の流れや雰囲気から感じる重要度としては
- 「いつでもスケッチをしていること」
- 「いつでも描いていること」
のほうが大きかったように感じました。知るよりも、体感する!といった感じなんでしょうか。そんなことも踏まえたうえで、ビルプ先生がご自身のスケッチブックを見せてくださいました。画面をうまく撮影できなかったのですが、先生がご紹介してくださっていたスケッチの一部を掲載します。
ビルプ先生のスケッチブック一部
ビルプ先生は、いつでもスケッチブックを持っていて、いつでもどこでもどんなときでもスケッチをしているそうです。
描いているペースとしては2か月に1冊くらいとのこと。
毎日量を書くという以上に、スケッチで得たいもの、得たい感情を、毎日欠かさず続けて書き記しているという印象を受けました。
目の前のものをコピーするのではなく、「分析をする」
また、セミナー冒頭でおっしゃっていたことで、印象に残っている言葉
- 「目の前のものをコピーするのではなく、分析する」
- 「モデルは関係ないんです、モデルから感じ取ったものをどのように描くか」
模写をするとよく、コピーのように写し取ることを教えられることが多いけれども、想像から描くために必要な模写というのは、模写をする際、目の前のものを分析し、感じ、それをどう自分が表現するか、ということが大切になるということをおっしゃっていました。
絵を描くということは考えるというコト
描くということは、考える事。
文章を書くときも確かに、見て経験して、その結果感じたものなどを自分に落とし込んでから、自分自身が考えたことを書くことが多いように思うのですが、絵を描くということも「伝える」という表現方法として考えたら「描くということは考える事」というのも自然な話だなと思いました。
また、感覚的に感じた「ビルプ先生の言っていた考える」というものは、ただ頭の中で思考として巡らすではなく、脳みそから神経から、精神的な面から何もかもで「身体や心、自分の持ちうるすべてを総動員して感じて経験すること」のように感じました。
だからこそ、伝える相手に感動が届くのかもしれないですね!
ビルプ先生のこの言葉で、あらためて「描く」ということの奥深さ、ある意味スピリチュアルなエッセンス部分も感じ、描くことってなんてエキサイティングなことなんだろう!と、改めて描くことの楽しさ、ワクワクを頂けました。
「ポーズが想像できない…」そんなときは
「自分でポーズする」
質疑応答の時間を設けて頂いた際に出てきた質問で「想像から描くにあたって、描きたいとおもうポーズが浮かばないのですが」という質問がありました。まさに、先生が学生→講師になる際にも大変苦労をされたそうです。
で、どうしたかというと「自分でポーズをとって描く」
これもまた、単純明快ですね!
浮かばない、ならば自分でまずは様々なポーズをとって描くことから始めましょうということでした。
これは、アニメ私塾の室井さんも似たようなことをおっしゃっていた記憶があります。「見たことがないものは描けないし、知らないものは描けない。だから(模写)たくさん書いたらいいんじゃないかな」みたいなお話だったと思います。
いいポーズが浮かばない!であればインプットをして、自分の「これいいな」をふやしつつ、実際にポーズをして描くことを続けていけば想像から自由に描けるようになる、という風に私は受け取っています。
絵が上達するコツ
さて、一番やはり気になるところ!
「どうしたら絵が上達するのか」
についての先生からの回答は…
- 「自分や親戚、家族の子どもを、0歳から20歳まで毎日描いたら上手くなります」
- 毎日、1本でもいいから線を描いてみましょう。描き続けましょう。
- 楽しんでやる
ドシンプル。
諦めずに描き続ける事。楽しんで描き続ける事。
ビルプ先生「ね、簡単でしょ?」
「簡単とは」と一瞬考えてしまいましたが、そんな風に話すビルプ先生はとても楽しそうでした。
本当は
- 楽しんで描くことが出来る環境や状況づくり
- 思考の紐づけ方法
など色々聞きたいところだったのですが、先生ご自身「描くこと=楽しい」なご様子で「毎日書かないといけない、量を書かないといけない」ではなく「楽しく毎日書いてたら結果的に量を書いちゃった」感がすごかったです。
ツイッターでどなたかが、「息をするように楽しんで描かれている人を初めて目の当たりにしたかもしれない!」といっていたのですが、私もまさに同じ事を感じていました。
【ちょっとびっくりな話】ビルプ先生が”先生”になったワケ
ちょっと絵を描くことからはなれて、冒頭にお話しされていた先生が先生になった経緯がとても面白かったのでご紹介を。
もともとは画家を目指していた
もともと先生も若いころは絵を描くための学校に行っていました。アニメーションを最初からやっていたわけではなく、画家を目指していたのだそうです。
ですが、学校で学ぶスピードがあまりにも遅く感じ、もっと学びたい!もうこの学校辞める!と決意して中退。
中退後、独学で絵画という絵画を研究・分析
その後独学で古くからある素晴らしいとされてきた古今東西の絵画を徹底的に分析、研究、表現としての構図についてひたすら勉強をされました。
絵を見る人に、伝えたいものや感情を伝えるための手段としての構図を学び、どのような技術が使われているのか、ツールが使われているのか、ということを会得するという半年間だったようです。
中退した美術学校に「先生」として雇われることに
伝えるための手段、構図、ツールを研究し続け、中退から半年したある日ビルプ先生は中退した美術学校に、「先生」として雇われることになったのです。
中退した「生徒」が半年後にその学校の「先生」になったわけです!
中退した半年後にその「生徒」が「先生」になるなんて、漫画か!なんて思いつつ、やはり事実は小説より奇なりとは本当のことなんだなあと思いました。
グレンビルプセミナーに参加して:さとう感想
ビルプ先生めっちゃ楽しそうだった
80歳とは思えないエネルギッシュな方でした!
握手もしていただいたんですが、その時のオーラがすごくてですね、身長3m超えてるじゃないか…?!という何かものすごいオーラを感じました。
描く!たくさん描く!楽しんで~!
世界中飛び回って、絵を教えてるんだぜいえーい! うらやましいだろ!できるよ!みんなも!みたいな印象をいただきました。
もう本当に「絵を描くのが好きなんだなあ…」です。
ビルプ先生のお話聞いてて、今までずっと「描く量がたりてないから描こう」という風に自分は思ってたんだなーと。
不足や不安感、焦燥感ではなく、ただただ描きたい!
ビルプ先生は「足りてない」とかじゃなく、「もっともっと描きたい!」が純粋にあるんだなって思いました。足りてないからもっと描こう…の心の源泉は「不安」だけど もっともっと描蹴るようになりたいから描こう!の心の源泉って「楽しさ」なんだな~と!
後者のほうがなんか 今の自分も認めたうえで 楽しい未来が待ってる感覚があるような気がする(n*´ω`*n)
セミナー通して感じたこと
通訳の人も意識されてたのかもしれないけれど、3時間のセミナーの中で「描かなければ”いけない”」という ネバベキ的要素の言葉は一切なかったように記憶しています。
その言葉の利用法の時点ですでに、ビルプ先生が「絵を描くこと=楽しむこと」になっているんだなあと感じられてすごく講義そのものがめちゃ楽しかった!
通訳の方がめっちゃ日本語ペラペラ
いや、通訳の方なんで当たり前なのかもしれないんですが、右側の男性が、通訳の方です。イントネーションも表現の仕方も日本人独特な言い回しでされてたりして、一瞬えっ ってなりました。
「あとはグーグル先生に聞いてみてください」
内心「絶対そんな言い回しでビルプ先生言ってないですよねww」でした。
全然関係ないですけど、この方の手がとてもかっこよかったです。動きとかフォルムとかもろもろ全部が理想の男性の手でした。講義を聴きながらこの方の手をずっと描いてました。へへ
一緒に記念撮影していただいちゃいました!
記念撮影もしてもらっちゃいました(n*´ω`*n)
会場にいらっしゃったAnimetionAidドローイング講師の唯せんせい(右側男性)と、フリーランスでコンセプトアートで活躍されてるtobias kwan(トバイアス・クワン)さん(左側男性)もいらっしゃったので記念撮影させていただいちゃいました。
3人一緒で撮影させてもらったのもあるんですが、私の緊張度合マックス引き笑い顔がやばかったのでそちらは個人的な記念に取っておこうと思います…
楽しかったので、来年もまた開催されたら行くんだ…!
本当に、楽しい3時間を過ごさせていただくことが出来ました。
先生の著書、ドローイングマニュアルは、通しで3回は読み直してはいるんですけれども、やはり生で教えて頂けるという状況は、生でしか体感できないものがたくさんあるんだなーと実感!サインももらっちゃったし。えへへ。
年に1回、来日されているそうなので、また来日された際には参加させてもらえたらと思っています。次は2デイズセミナー参加しよ~~!
長くなりましたが、グレンビルプ先生のセミナーのエッセンスだけでも、受け取っていただければ幸いです。
グレンビルプ先生の書籍
グレン・ビルプのドローイングマニュアル
※ ドローイングマニュアルの実際に読んで、実践してみてのレビュー記事です。
合わせて読んでいただきたい記事
※ まだ人体を書くことに全く慣れていない!という方は、上記記事内のルーミス先生の書籍を手に取ってみてください。詳細については記事内に掲載させていただいております。
※ ビルプ先生のドローイングマニュアル内で「パースはそれぞれ勉強しておいてね」という箇所があります。まさかの。パースについての理解はコチラの書籍を利用して勉強されることをオススメします。(理由は書籍紹介ページにて)